乳がんの妻と夫の和解 その3
乳がんで乳房切断した妻と夫の相談事例その3です。
前回のその2はこちらから→ https://retreat-lab.jp/reconciliation-between-a-wife-with-breast-cancer-and-her-husband-part2/
私と院生は彼女の話を聞いていて、
お友達のいいアドバイスがあったのに、
何故暗い顔をしているのか、不思議でした。
そこまで話して、一息大きく吸い込んで彼女はまた話したしたのです。
「怖いんです、私」
友達はとっても上手くいったけど、
私の場合は上手くいかないんじゃないかって・・・
最近の夫は気難しくて、
どう対応していいかわからない私が、
冗談めかしてタッチングをするなんて、不自然!!
もし、タッチして私の手を振払われたらと思うと、ゾッとします。
もう、どうしていいかわからないのです、と。
トライアルをためらうことはよくあるのですが、
彼女の場合は、これ以上傷つきたくないという思いでいっぱいのようでした。
じゃあ、悩んでいるけど現状のままでいいのでしょうか?と問うてみました。
そうすると黙ってしまい、現状もこの先が真っ暗でどうしていいかわからないし、トライアルに失敗すると、傷付きすぎて回復できないかもしれないと。
そこで、現在の治療状況や体調を教えていただきました。
一旦治療は終わり、経過を見ている最中であること、
治療の副作用は軽微で、今は気にならない程度であること。
普段の生活は、家事はこなしているし、
そとにパートに出ようかと検討している状況とのことでした。
ということは、体力的にはリカバリーできそう!
でも問題は心理面が、リカバリーが危ういようでした。
今の自宅の中で家事をして過ごす生活、
体力は回復してきているに、
彼女の関心事は家庭の中だけにとどまっているようでした。
家事と夫との関係。
もしかすると今の生活を俯瞰できると、もっと自分自身についても、ご主人についても別のとらえ方ができるかもしれない!
また、相手の感情に依存しないためにも、
他に関心を向けたほうが関係は改善が見込めるかもしれないと感じました。
彼女は友達ともあったりして、外の空気を取り入れているので、
それをバネに、外での仕事などで新たな人間関係や集中することを作っていくいことで、
夫との関係にびくびくしたり、神経を使いすぎなくて済むのではないかととお話をしました。
夫との関係を何とかするために、
今は「どうしていいかわからない」状況の中で、
あれを試しなさい、これをやってみなさいは、彼女にとっては脅威でしかないでしょう。
外で働くことで、夫との話題も、外の仕事の話題など、自然と増えていくことも考ええられます。
そして、以下のことを整理しました。
①なぜ、夫の関係を改善させたいのか、改善させた先をどう見つめているのか(どんな関係でありたいのか)
②もし夫との関係を改善できなかったら、あなたはどう感じどうなるのか。それはあなたにとってどのくらい辛く寂しいことなのか。
③かかわりの中で、関係が悪化した場合、あなたはどのような選択肢があるのか。
とても答えにくい質問でしたが、
丁寧に考えて、一つひとつ答えていかれました。
答えの中で、気づかれた点がありました。
もし、再発した場合を彼女は考えていました。その時に支えてほしいし、一緒にそれまで歩んでほしいと。
多分、再発して自分自身が死の床に就いたときに、
夫との関係が希薄なままで、自分も歩み寄りをしなければ、きっと自分の長く過ごしてきた夫婦としての時間を後悔することになる。
夫に対しては、感謝している。
術後からの夫の態度は自分自身には辛いものだが、
それまでの夫と生活してきて、たくさんの幸せがあったし、子どもも一緒に育てた。
再発してしまうと、自分の人生の中で一番長く一緒に過ごしたのは夫なので、
夫との関係はなによりも大事。
夫に依存したいわけではないが、最後に夫にできることをして感謝をつたえたいと思っていると。
では、いったん俯瞰して関係を見つめ直せるまでは、
その感謝の気持ちは伝えていってもいいんじゃないでしょうか。
「ありがとう」と「感謝している」連発作戦はどうですか(笑)と。
相手に何を求めるわけでもなく、
まずは、自分自身が感謝を伝えるだけでいい。
夫婦でも、お互いのことはわからないのが本当のところでしょう。
特に日本人は、相互に気を遣わさないような配慮をとてもします。
妻の前で、そのまま感情をむき出しにしないことも多いし、
夫として耐えている部分もあるでしょう。
その分かりにくさが、お互いを疲弊させることも多いのです。
そういう意味ではとても複雑で、関係を良くするためには、
いくつものハードルがありそうです。
でも、今はまだ再発していないので、
焦らずに、あなたのできることで、負担がないことをしましょうと。
それまでじっと下を向いていた彼女は顔をあげ、
自分の心の内をこんなに話したことはなかったです。
友達にも言えていなかったです。
でも、自分が何に焦っているのか、気が付きました。
そして自分がこんなにも夫に感謝しているってこと、
言葉に出して、初めて自覚できました。
これまではなんとなく思ってはいたけれど、重みがわかりませんでしたが、
自分のなかの焦りは、感謝しているのに、手術だけでこんな関係になったことが悔しくて・・・・・
自分がこんな病気にならなければ、と自分自身も攻めいていました。
前に進む方法はあるし、
これからももしかすると、何かを変えることもできるかもしれないと思えました。と彼女!!
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この作業は、第3者だからできたのかもしれません。
だって、知らない人なので、翌日顔をあわす心配はしなくてよさそうだし、
とても客観的にみてくれるという安心感もあります。
私はそういった方の外側で、第3者として待っている役割なのだろうなと思いました。
私に紹介した院生は「私ではどう対応していいかわからないケースでした。夫との関係修復の方法論ばかりに、気を取られていました」と。
第3者のメリットは俯瞰できるという点にもあります。
別の地平から見ると、別の姿が浮かび上がってくることもありますからね。
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未来の健康をデザインする
高槻リトリート研究所
元大学教授が自身の研究した知見などをもとに、がん患者やご家族の支援をした経験を個人を特定しない方法で公開しています。


